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【刀剣乱舞】心はじじい

第1章 【心はじじい】 道具と人の狭間の話(男主)



「夜桜というのもおつなものだな。」

お気に入りの茶葉を使った緑茶片手に縁側に座り込む。
誰に向けたわけでもない一言は物陰にいる狸の耳にでも届いたのだろう。

木の板の軋む音と共に茶菓子を持った三日月宗近が現れた。
打除けの三日月を思わせる瞳から感情は読み取れない。

終始笑顔の食えない爺さんと認識している。
どれだけ美しかろうと自他共に認める爺さんだ。

「若いのに趣味が渋いな。主。」

「たわけが。私が若いなら世の中の若者は赤子のようなものだろう。」

「体は若いだろう。心は別としてな。」

よっこらせと隣に腰を下ろす三日月宗近は相変わらず感情がうまく掴めない。
天下五剣の中で最も美しいと言われる三日月宗近は、この本丸においては古参だ。

自由奔放に見えて意味のある行動をとるところが主に似ていると短刀達に言われたこともある。
こんな食えない爺さんと一緒にしないで欲しいと抗議したら同じもんだと返された時は頭を抱えた。

「へし切長谷部が、主の話を俺達にしてくれてな。」

「ん…ああ今朝の話か?」

少しぬるくなってしまった緑茶を飲みながら茶菓子をつまむ。
これは確か鶴丸国永が隠してた菓子じゃないか。
この爺さんくすねてきたな。

「爺さん。鶴に怒られても知らんぞ。」

「ははは。主は良く覚えているなぁ。」

悪びれる様子もなく茶菓子を口に放り込む。
私も食べてしまったので連帯責任だろうが私は謝らないぞ。

非難の意を込めてジト目で見てやると微笑まれてしまった。
この爺さん相手に無言の攻防など、こちらが疲れるだけであろう。
早々に攻めるのをやめて三日月宗近の話を聞くことにした。

「主は、いつも曖昧な返事をするのに俺の前では子供だな。」

へし切長谷部の話と茶菓子の話両方のことだろう。
桜の前までわざわざ隠れてついてきたのも、鶴の菓子をくすねてきたのもこのためか。
全くもって食えない爺さんだ。

「爺さんに曖昧な返事をしても堂々巡りだ。意味がない。他の刀達は自分で答えを探せるし、必要な時はまっすぐ伝えるさ。曖昧な命令は多大な損害の火種だ。」

単純に思ったことをぶつける。
天下五剣相手に不敬すぎる態度だが、食えないところが同族ゆえにどこかゆるかった。
きっとそれは三日月宗近も承知の上だろう。
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