第5章 魅惑の女性
とんとん、と吹雪が雑誌のページを指先で叩きながら言った。その質問は単純な好奇心から来るものだった。仕方がないだろう、風丸と花織はあんなにも仲がよいのだから。吹雪が指差したそのページは紛れもなく全裸の男女が交わり合っていて、女の人が艶めかしい表情をしている。風丸は全力で首を横に振った。
「あ、あるわけないだろ!!」
「えー、ないんだ?あんなにいつも仲良しだから経験済みかと思ってたよ」
遠慮もなくずけずけと吹雪が言う。でも間違いなく風丸以外の男は安堵し、もしくはチャンスだと思ったに違いない。少なくとも現時点で月島花織の純潔は守られているわけだ。ふたりが不仲になれば彼女の”初めて”を頂くことができるかもしれないわけで。
「仲がいいのはいいけど、今は合宿中だから控えるようにね。そもそも俺たち中学生だしさ」
釘をさすヒロトの言葉に風丸は 恥じらいから唇を噛んで視線を逸らす。顔は相変わらず真っ赤だ。だが彼の思考の中であることが腑に落ちた。ここのところ彼が感じていた花織への感情はこれなのだ。花織をもっと欲しい、その答えが吹雪が差し出した本の中にあった。
俺は、花織と……。
「一郎太くん、いる?」
その時、食堂に花織がひょっこりと顔を出した。胸元の空いたTシャツと短めのハーフパンツといういで立ち。しかも今日に限って珍しく黒髪をアップにしており、真っ白な手足どころかうなじまでさらけ出している。屈めばその豊満な胸元が見えるかもしれない。中学生男子が夢想するには十分すぎる格好。
彼女は彼らが一体何を話し合っていたかも知らないで風丸を見つけて表情を綻ばせる。各々男子の視線は無防備な彼女に向けられた。湯上りの彼女は中学生女子とは思えないほどの色気を纏っている。
「待たせちゃってごめんね、行こう?」
手早くヒロトと吹雪が雑誌を隠したが、花織は食堂には入ってこず、何も知らずにニコニコと笑って風丸を待っている。風丸は変に高鳴る胸の鼓動を抑えながら立ち上がった。立ち上がりざま、隣に立っていた鬼道がぼそりと呟いた言葉を風丸は聞き逃しはしなかった。