第5章 魅惑の女性
イメージはできていた。必殺技が完成するまでにそう時間はかからなかった。前半残り少なになってふたりはピッチに戻ってきた。風丸は虎丸と交代してミッドフィルダーに入る。花織はベンチに腰掛けて汗を拭った。
「花織、できたんか?必殺技は」
観戦に来ていたリカが心配そうに花織に問うた。花織は自信たっぷりに微笑んで頷く。
「見てて、凄い技だから」
前半残りわずか、風丸はその完成させたばかりの必殺技で固いネオジャパンの守備をこじ開けた。
「風神の舞!!」
竜巻のように舞い上がる風、美しく舞うその姿に花織は見とれる。練習を共にしてきたのだからどんな技であるかはもちろん知っていたが、練習でみるのとピッチに立つ彼が放つそれを見るのとはわけが違う。
「一郎太くん、頑張って!!」
花織は息を切らせたまま、彼の名を叫ぶ。風丸が切り込んだボールは豪炎寺に渡り、豪炎寺が爆熱ストームにてネオジャパンのゴールをこじ開けた。これで得点は一対一となった。同時にホイッスルが鳴る、前半終了だ。
風神の舞に対しての称賛を受けながら風丸がピッチに戻ってくる。花織は立ち上がって風丸の元へと走った。
「一郎太くん、格好良かったよ!」
「花織」
抱き着かんばかりの勢いで花織が風丸の左手を取る。風丸は花織の髪を撫でて頼もしく笑った。
「完成できたのは花織のおかげだよ」
「ううん、一郎太くんの努力の賜物だよ」
素敵だった、と花織が満面の笑みを浮かべる。美しい黒髪がその微笑みと共に陽光に輝く。疾風ダッシュが完成したときと同じやり取りだった。あの頃からサッカーにおいてのふたりの関係は完成していたのだ。