第5章 魅惑の女性
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「お疲れさま、一郎太くん」
夕暮れ時、練習時間目いっぱいを使って必殺技の特訓に励んだふたりは鉄塔広場のベンチに掛けて帰る前に休憩を取っていた。涼しい風がふたりの間を吹き抜ける。それが汗に濡れた身体には気持ちいい。
「ありがとう、花織。イメージもできたし、あとは練習あるのみだな」
花織との特訓と、風が木の葉を巻き上げる瞬間を見てからインスピレーションが沸いたようでグッと風丸の練習効率が上がった。あとはそのイメージを形にするために特訓をするしかない。
「一郎太くん」
「ん?」
「今日、一緒に練習をしてくれてありがとう」
風丸は首を傾げた。今日、花織と一緒にここへ来たのは鬼道の指示だ。指示がなくともマネージャーが一人、誰か付き添いをするとなれば間違いなく花織が付いてくることになっただろう。そしてそれについて礼をいうべきは風丸の方で、決して花織の方ではないだろうに。花織は背筋を伸ばして夕日を眺めている。長い睫毛がそうっと伏せられて静かな声で彼女は語る。
「今日の練習中、ずっと考えてた。疾風ダッシュの練習をふたりでしてた時のこと」
必殺技の特訓が禁止されていた時、ふたりでこっそり練習して編み出した疾風ダッシュ。風丸の代名詞ともよべる必殺技で、共に練習した花織自身も会得している。あの時は実力差もほとんどなくて、それ以上に花織の気持ちが風丸には無かったころだ。
「あの時も私と一緒に練習してくれた。今度の新しい必殺技も一緒に考えられることが凄く嬉しいの」
ふんわりと花織が風丸に微笑みを向ける。混じりけのない喜びを露にしたその表情が風丸には愛おしくて堪らない。いやそれ以上に、花織がそんな風に考えてくれていることが何よりも嬉しい。