第4章 微細な変化
風丸と同じポニーテールを揺らして緑川が肩を竦める。ぬるくなったタオルを花織に手渡してありがと、とまた礼を言った。そしてすり抜けざまに彼は眉を顰めて笑う。
「あんまり君と一緒にいると風丸に申し訳ないし、それにヒロトが妬きそうだ。俺のことは放っておいていいから、アイツらを相手してやってよ」
ひらりと手を振って緑川が合宿所内に戻ろうとする。花織はその緑川の行動が何かを隠しているかのように感じられた。自分を遠ざけようとしているような……。考えすぎか、花織は思う。緑川自身が気さくだがあまり人とは干渉したくない人なのかもしれないし。何せ彼のことをまだよく知らない。
「緑川くん」
花織が緑川を呼び止める。それでも忠告だけはしておかなければと思った。彼がそれを聞いてくれるかは定かではないけれども。
「無理はしないでね」
緑川を見つめる黒髪の少女。緑川はその黒い瞳でじっと彼女を見た。自分と同じ黒い瞳は紛れもなく自分を心配するために向けられたものだ。優しくて綺麗でよく気が付く、ヒロトが夢中になるのはこれだろうか。でも余計なお世話だ。強くなければ試合に出られない、そのためには多少の無理が必要なことをこの子はわかっていない。
「俺は大丈夫だよ」
最後の言葉を繕えていたか、緑川は自信がなかった。