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諸恋

第4章 微細な変化




浴室は男女共同で使っている。本来は入浴時間が決まっていて選手の部屋順に時間が決まっており、日ごとに交代していく。選手たちが入浴したその後に花織たちマネージャーが入って浴室を閉める、という形を日々とっていた。夜間、鍵自体かけないため、出入りははっきり言えば自由だ。

花織は素早く脱衣所に滑り込むと鍵を掛けた。そして汗のしみ込んだTシャツとハーフパンツを脱ぎ捨てる。下着のブラジャーを外せばぷるんと弾けんばかりに彼女のコンプレックスが飛び出した。

「……また、大きくなったかも」

困ったような声を思わず漏らしてしまう。白いたわわな胸に両手を添えれば汗で吸い付くような肌の感覚と柔らかな感触。同世代の男の子は大きい方がいいという意見が多いけれども、果たして風丸もそうだろうか。走るにおいては邪魔でしかないものだが、風丸がこのほうがよいというのであれば、コンプレックスに感じる必要はないのかもしれない。

もしも今、触れている自分の手が風丸のものだったら。

”もう少し一緒にいるか”

脳内で彼の声が色めいて響く。脳裏に浮かんだ彼の男らしい声と表情に、花織は顔から火が出そうになる。経験がないとはいえ花織も年頃の少女だ。そういう、ある程度の知識は持っている。彼は決してそういう意味で言ったわけではない、わかってはいるのだが。

”監督にバレなければ問題はないだろ”

彼の表情とあの時のムードがやけに色気を孕んでいて、少しだけ変な感情を抱いてしまった。あのまま空気に流されてあの場にいればどうなったのだろう。花織はその先を思わず空想してしまう。まだ風呂に足すら踏み入れていないのに逆上せそうなほど身体が熱くなる。下腹部がきゅんと切なくなるような感覚に襲われた。

花織は淫猥な妄想をしてしまう自分を恥じて首を振る。素早くショーツを脱ぎ捨てて髪を解いた。

今日は疲れているんだ、早く休もう。そして忘れてしまおう。

タオルで胸元を隠しながら濡れた大理石の上をペタペタと歩く。大浴場には嗅ぎなれたメーカーの石鹸の香りがほのかに残っているようなそんな気がした。
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