第4章 微細な変化
……今日の一郎太くん、いつもとちょっと違った。
二時間ほど前の出来事を思い出して花織は再び顔を赤らめた。思い出すだけで心臓がドキドキと大きく音を立てる。別に変だというわけではなくて、帰り際の彼はなんというかとても色っぽいような感じがしてどういうふうに接していいかわからなくなってしまった。
そういう気分を誤魔化すため、というわけではないが花織は今、地下修練所にいた。ここは雷門中、ということは自主練習をするだけの設備があるのだ。もちろん監督には無許可だが、おそらくバレることはないだろう。整備こそきちんとされているが、ここはイナズマジャパンの練習では一切使用していないのだから。
そんな場所があるのだから使わない手はない。疲れていようが何だろうが、花織は練習を怠る気はない。風丸に抱きしめてもらえただけで気力は充電できた。それだけで十分だった。
女子である花織がどんなに練習を積んだってFFIの日本代表にはなれない。でもそんなことは関係ない花織の目的は日本代表になることではないからだ。花織の目標はずっと変わることは無い。
休憩を終えて彼女は立ち上がる。汗を拭いながら修練所の電源をオフにした。この修練所の最大レベル、10の120分コースをいつの間にかクリアできるようになっているのだから確実に今までレベルアップしてきたのだと実感する。花織ですらこうなのだから風丸たちが日本代表に選ばれるのも頷ける話だ。
外へ出るとムッとした湿気が彼女の身体にまとわりつく。ただでさえ体中が汗でべたべたなのにと花織は顔を顰めた。暑さのせいで余計に汗が噴き出す。早くシャワーを浴びて休みたい。
そんなことを思いながら足早に合宿所へ戻る。こっそりと一階の大浴場へと向かった。監督の部屋は四階だから、よっぽどのことがない限り気づかれないだろう。