第4章 微細な変化
からかうように吹雪がくすくす、と笑った。ヒロトも朗らかに笑っては見せるが腹の中では吹雪の真意に気づいている。彼氏がいるから、振られたからと言って諦めてなどいない。だから俺をライバル視して牽制しているのだ。ヒロトは表情を崩さずにこの会話は不毛だ、と内心思う。でもこんなことしかできないのだ、彼女と彼女が恋い慕う男の間にはどうやっても割り込めないのだから。
「まあね。でも正直言うと可愛いとは違うかな」
「そうだね。可愛いっていうよりは、綺麗ってイメージ」
隣の緑川は黙って食事を摂っている。二人の会話に口を挟む気はないらしい。むしろそんな暇があるなら練習をしていたい。緑川リュウジは思う、この場に花織の恋人である風丸がいなくて本当に良かったと。風丸は今、円堂から虎丸の事情を聴くので忙しそうだ。こちらの話題は恐らく全く気にしていない、と思う。
しかしながら……。緑川は思案する。確かに、そうなのだ。二人が会話に出している月島花織という女性は可愛いというよりは綺麗な人であった。緑川は二人のように彼女に恋心を抱いているわけではないが、客観的に見ていてもそう思う。可愛い人、というよりは美人という表現がよく似合う。
立ち振る舞いが洗練されているからか、口調が考えが大人びているから?理由はよくわからない。それでも他のマネージャーには無い人目を惹くような何かがあるのだ。あの女性には。
「やっぱり、諦められないな」
ぽつりと呟いた白銀の髪がふわりと揺れた。