第4章 微細な変化
「急にどうしたんだい、吹雪くん」
「急に、って。ヒロトくん、さっきからずっと花織さんの事見てるから」
にっこり、ヒロトに向けて人の好い笑みを浮かべているのは吹雪士郎だ。ヒロトはため息をつく、嫌な人物に想いを悟られてしまったのかもしれないと思った。何せ吹雪の指摘のせいでその事実に気づいた緑川の、またかというような呆れた視線が痛い。
「花織さんって、素敵だよね」
うっとりするようなため息交じりに吹雪が呟いた。その瞳は対角線上のテーブルで飛鷹のコップに水を注ぐ彼女に向けられている。花のように笑う彼女を見つめる深緑色の目は、とろけるような甘さを孕んでいた。ヒロトは黙って吹雪の言葉を飲み込む。
知っているよ。随分前からキミが、彼女に恋をしていることなんて。
ヒロトは吹雪を見つめて目を細める。エイリア学園時代、彼女のことは随分と探ったのだから。彼女の恋人も、彼女の初恋の人も、彼女を思い慕っている人間も全員。そもそも、イナズマキャラバンに参加しているメンバーについてはそこそこ調べていたのだけれども。
「本当にどうしたんだい、吹雪くん。急に」
「今日の花織さん、いつもより大変できつい筈なのにそれでも笑ってて。花織さんのそういうところ、あらためていいなあって思ったんだ」
まあ僕、もう振られてるんだけど。そんなことをいって吹雪は穏やかに笑って見せる。ヒロトは吹雪の白々しい態度を無視して、彼に同調した。
「吹雪くんの気持ちわかるよ。……俺は今まで彼女をずっと傷つけてしかこなかったから、なんだかチームメイトとして接してくれるのが新鮮でね。近くで見てて、改めて一生懸命ですごく可愛い人だと思うよ、彼女」
「見とれるくらいには、ね?」