第4章 微細な変化
「あれ、秋さんたちはどうしたの?」
目金とふたりで夕食の準備をしていた花織に、カウンター越しに吹雪が声を掛けた。練習を終えてこれから選手たちが食事に来るのだろう。準備をペースアップしなければならない、と花織は思いつつ吹雪の問いに答えた。
「キャプテンたちと一緒に出掛けてるみたい。虎丸くんのおうちに行ってるってさっき秋ちゃんから連絡があって」
宇都宮虎丸は合宿所に寝泊まりをしていない。練習が終わればさっさと帰ってしまう選手だ。選手たちはそれを不審に思っていて、円堂たちはそれを調べにいくのだと言っていた。少なからずそれが虎丸とチームの間に不和を生んでいたからだ。彼の早退を快く思わないものもいた。
家庭の事情ならば放っておくべきだというのが花織の考えだが、それがチームの不仲が少しでも解消されること、そして虎丸の消極的なプレーの原因を究明できる手段なのだというのならば、探ることも必要なのかもしれない。
「そっか。僕も何か手伝おうか?」
「ううん。士郎くんは練習頑張ってるんだから。私たちがこのくらいは頑張らないと」
優しく微笑みながらお膳に載せた食事を吹雪の前に差し出す。今日の夕食のメニューはカレーライスとサラダ、そしてデザートにリンゴだ。人手が足りないから手の込んだものは作れなかったのだ。