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諸恋

第3章 恋人の距離




部屋の中だからと言って何もできないわけではない。筋トレだってできるし、ストレッチだってできる。そこまでのスペースはないがリフティングや狭い範囲でのドリブルなど、ボールを使っての練習ができないわけではない。

花織は風丸のために何かがしたかった。彼が世界という舞台で走ることができるようになんでもしたいと、先日もそう思ったばかりだ。だから消灯後、彼女なりに勉強した。自分が風丸にできることを。元々陸上をしていたから筋トレメニューやストレッチ、マッサージの方法だってわかっている。それをサッカーで使う筋肉に応用すればいいだけだ。

他の選手からすれば花織の行動は依怙贔屓として映るかもしれない。だが間違いなくチームの足を引っ張ることではないはずだ。それにこの部屋にこもる時間を少しでも有用に使えるのであればきっと誰も文句など言わないだろう。

そう考えた花織の提案により、ふたりは彼の部屋で筋トレをすることになった。風丸も練習したいと考えていたし、何もしないよりは良いだろうと花織の提案を受け入れてくれた。

「……集中してやってみると、結構きついな……っ」

風丸が息を継ぎながら花織に微笑む。そんなことを言いつつ顔はまだまだ余裕そうだ。現在はスクワット10×10セット中だ。太もも、大腿四頭筋を鍛える筋肉トレーニングである。一見簡単そうに見えるこの運動だが反復していくとかなり負荷がかかる。

「っ、うん」

花織も一緒にスクワットをしている。正直彼氏に筋トレをしている姿なんて見せたくはない。だが、花織はそれ以上に風丸と共に運動して感覚を共有したいと思っていた。だからこそ、彼と同じメニューをこなそうとしている。
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