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諸恋

第3章 恋人の距離




ふっと悪戯っぽく鬼道が笑う。以前もこんなやり取りをした。その時は本気で言葉通りのことを感じただろうが、今はそうでもない。最近の風丸は花織が他の異性と話すことに少し寛容になったようだ。勝者の余裕という奴だろうか、少しだけ恨めしく思ってしまう。今はそんなことを気にしても仕方がないだろうが。

「お前が何を言いたいかはわかっている。……監督の事だろう。他の奴らも不信感を募らせているのは見えているしな」

花織と鬼道は強い信頼で結ばれている。鬼道の深いところにある悩みを聞くのは花織であるし、サッカーに関しての花織の悩みを聞くのは風丸ではなく、専ら鬼道の役目だ。

「よくよく考えてみれば久遠監督の素性って全然わからないんですよね」

鬼道の妹である春奈が言っていた。日本代表チームの監督になるほどの人間なのに調べてもデータが全くないのだと。

「久遠監督の采配には少々疑問があるんです。……キャプテンの言うように改善すべき点をはっきり言ってくれる、というのは良いのでしょうけれど」

険しい顔で花織が呟く。口には決してしないがはじめから何となく、久遠監督には多くの疑問があった。

まずは代表選手の選抜。不動のこともさることながら、未だに選ばれた理由が分からない人物が花織の中でも二人ほどいる。一人は宇都宮虎丸。確かに高い技術は持っているのだろうが、決定的なチャンスを逃しがちだ。決めるべきところで決められないというのは日本代表選考基準としてどうだったのだろう。選考試合では他によっぽど活躍してる選手もいたのに。

もう一人は飛鷹征矢。こちらは完全に初心者だ。花織ですら彼よりはうまくプレーができるかもしれないと思う。運動神経が悪いわけではないようだから、綱海の前例もあることだし今後の成長に期待、ということも考えられなくはない。しかしそれは日本代表選抜チームでやることではない。
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