第3章 恋人の距離
朝食後、選手たちが練習の準備を始めている間、マネージャーは朝食の片づけをしている。やはり人数が多いと片付けにも時間がかかる。キャラバンの時は使い捨てのお皿を使うことが多かったから洗い物は比較的少なかったが、合宿中は学校の食器を使うためそうはいかない。
「みんな、朝から一杯食べてたね。もう十人前くらい準備しておかないと足りないかも……」
泡の付いたスポンジで皿を次々洗いながら花織が呟く。実際花織の言葉の通りだった。一応おかわりができるようにと味噌汁とご飯は多めに準備しておいたのだが、今日の朝食は綺麗になくなってしまった。むしろ足りなかったぐらいだ。
「今日は特に練習初めだから気合が入ってたもんね。私たちも頑張らないと」
花織の隣で花織が洗った食器を洗い流しながら秋が答えた。春奈はテーブル拭き、目金は床を磨いている。三人のマネージャーと一人の戦略アドバイザー(記録係)では選手に対して人数が多いような気もしたが、そんなこともないのかもしれない。
「夏未さん、今頃どうしてるのかなあ」
花織がぽつりとつぶやいた。日本代表のマネージャー候補として選ばれたのは春奈、秋、花織、そして夏未の四人だった。実際説明会には夏未も呼ばれていたのに、選考試合の時には夏未の姿がなかった。よくよく秋に聞いてみれば選抜試合の二日前に海外へ留学するために日本を発ったのだという。いつも四人でマネージャー活動をしてきていたから、夏未がいないというのは正直妙な感覚だ。
「ずっとマネージャーを一緒にやってたから、夏未さんがいないのすごく変な感じがする。やっぱり寂しいね」
花織と夏未はあまり話をする仲ではなかったが、彼女はフットボールフロンティア地区予選のときから一緒に戦ってきた仲間だ。いなくなってしまったのはやはり寂しいと思う。彼女自身で選んだ道で頑張ってほしいという気持ちがもちろん大きいが、一緒に世界一を目指したかったとも思う。