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諸恋

第3章 恋人の距離




からりと教室の扉が開く。花織は自然とそちらに目をやった。見えたのは蒼い髪のポニーテール。彼は豪炎寺と談笑しながら食堂に入ってきた。そして花織の視線に気が付くと花織に笑顔を向けた。

「おはよう、花織」

彼と交わす挨拶はもう何度目になるかはわからない。それでも爽やかで明るい彼の笑顔はいつだって花織の心を明るくする。何度だって胸が騒ぐ。ほんのりと花織の頬が赤くなった。

「おはよう、一郎太くん。……豪炎寺くんも」

風丸を見つめて、そのあとに豪炎寺へ視線を移した。豪炎寺は呆れたように花織を見て笑う。俺は風丸のついでか、そんなことを言いたげに花織を見て豪炎寺は花織へ挨拶を返した。

「おはよう。朝から仲がいいな」
「おい、茶化すなよ豪炎寺」

からかうような豪炎寺の言葉に風丸が困り顔で言った。少しだけ彼の頬も照れたように赤くなる。そんな彼がやはり好きで、花織は自然と表情が綻ぶ。彼女の背後で炊飯器がご飯が炊けたことを知らせ、花織はそれを振り返る。

「ご飯、もうすぐだから。ちょっと待っててね」
「ああ」

もう一度風丸を見つめて花織が言えば、その言葉に風丸が頷く。そんな仲睦まじげな様子を見て豪炎寺が何か言いたげに風丸の肩を叩いた。何だよ、と風丸が豪炎寺を振り返る。彼の耳は頬と同じように少し赤い。彼らは中学生らしいやり取りをしながらカウンターを離れていく。花織はただただそれが微笑ましいと思った。

「ほんと、仲良しですね。先輩!」

花織の隣でふたりのやり取りを見ていた春奈が微笑ましいと言わんばかりに花織の両肩を叩く。花織は春奈の言葉に赤い頬を益々赤くしたが、それを否定したりはしなかった。
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