第14章 スタートライン
花織がいたから風丸のサッカーは始まった。花織がいたから帝国学園に挑み、いつの間にかあのフィールドで走ることの楽しみを得た。花織はいつもそれに付いてきてくれた。自分を想い、隣で走りたいと願い彼女に出来うるすべてを自分に費やしてくれた。他のどこを探してもこれほど自分を想ってくれる人間はいないだろう。花織は風丸の全てだ。
「俺も、この場所で花織と出会えてよかった」
夕日が音も立てずに静かに沈みゆく。花織は風丸の言葉を受けて静かに瞳を閉じた。風丸は静かに花織の顔に自らの顔を寄せる。ふたりの影がゆっくりと重なり合う。唇が重なり合って、風丸は目を閉じた。言葉にならない想いの全てが唇から触れた指先から、重ねられた手のひらからお互いに伝わっていく。何かを確かめるように長く唇を重ね、ふたりはそっと唇を離した。
唇が離れたと同時にふたりはお互いを見つめ、微笑み合った。この場所にふたりでいられる時が、どうしようもなく幸せで微笑みが零れるのだ。風丸は真っ直ぐに花織を見つめて彼女の名前を呼ぶ。
「花織」
彼女の手を強く握って、触れた頬の温かさを感じて。他に言葉は何もいらなかった。なにより彼女の大好きな笑顔を見つめて、彼にとってのありったけの言葉を風丸は花織に囁く。
「愛してる。これから先もずっと、どんなことがあっても」
何度も好意を交わし合った中で、初めて告げた言葉だった。花織は少し驚いた様に瞳を揺らがせたが、すぐに喜びに目を細めた。彼の言葉に答えようと彼女の唇が開く。
「私も、一郎太くんを愛してる」