第14章 スタートライン
「三年間、いろんなことがありましたね」
「ああ……、そうだな」
「雷門中で過ごした時間はそのうちの二年間だけでしたけど、それだけでも詰め込みすぎなくらい色々なことがありました」
二年間、この雷門中学に転校して来てからは波乱の日々ばかりだった。フットボールフロンティアで日本一に優勝、エイリア学園との戦いで日本を守り、フットボールフロンティアインターナショナルで世界一となった。それだけではない、多くの学校行事が花織の学校生活を彩ってくれた。だが。
「私の中学校生活……。帝国での一年間は、全て鬼道さんとの思い出だけです」
花織は目を伏せて思い出すようにそう言った。鬼道が花織を見つめて微笑む。そう、花織と鬼道の始まりは帝国にあった。二人だけの場所で二人だけの時間を共有しあった。花織の帝国学園での一年には鬼道の存在がすべてだった。
「鬼道さん」
彼女は鬼道の名前を呼ぶ。花織は鬼道の瞳を見つめ、鬼道は花織の瞳を見つめていた。その間には長い沈黙があった。他には何も目に映らない、教室の壁に掛かった時計の秒針だけが時が進むのを二人に知らせる。花織は鬼道を見つめて儚げに微笑んだ。その表情には寂し気な色が浮かんでいて鬼道は少し眉を寄せる。彼女の唇が静かに動く。
「さようなら」