第14章 スタートライン
「いい試合だった、優勝おめでとう。花織」
「ありがとう、ウィンディ」
花織はウィンディの手を取って握手を交わす。彼女の表情には喜びが溢れ、悩みなど今は一切ないようだった。ウィンディは口元を緩める。花織から手を離して彼女の隣に立っている風丸に手を差し出した。
「おめでとう、カゼマル。……負けたぜ、お前のスピードには」
「いや、そんなことはない。お前も十分に速かった」
試合中風丸とウィンディは何度かボールを競り合った。拮抗した戦いの中で今回は僅かに風丸が抜きんでていた。ウィンディは握った風丸の手を見つめる。今回は俺の負けだ。ゆっくりと手を下ろしてウィンディは風丸と花織を見つめる。憎たらしいほどお似合いのふたり。
「カオリ。……カゼマルがお前の、運命の人なんだな」
ウィンディが声を絞り出して、花織に問いかける。花織は少し驚いたような顔をしたが、彼女の表情にはあの時のような迷いなく、真っすぐにウィンディを見つめて頷いた。
「うん。一郎太くんが私の運命の人なんだと、私はそう信じてるよ」
「……そうか」
ウィンディは幸せそうに笑う花織を見て、微笑みが自然と零れた。この男の隣にいる今のカオリはとても美しく、幸せそうに見える。惚れた女の幸せを願うのが、今の俺にできることだ。ウィンディは目を伏せ、息を大きく吐いた。そしてユニフォームを脱ぎ風丸に差し出す。
「カゼマル、カオリを幸せにしろよ」
風丸はウィンディの意図を汲んで、自らのユニフォームを脱いだ。脱いだユニフォームをウィンディに差し出して、彼が差し出した緑色のユニフォームを手に取る。決意を新たに風丸は自分にそっくりなウィンディを見つめ、頼もしく微笑んだ。
「ああ、もちろんだ」