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諸恋

第13章 ふたりの軌跡





「花織、ありがとう」

彼の瞳は花織を慈しみ、愛おし気に見つめる色を映していた。風丸は花織の右手を取り、優しくその手を包み込む。

「あのさ、俺も……。決勝の前に花織に話しておきたいことがあるんだ」

風丸がじっと花織の顔を覗き込む。風丸の唐突な言葉に花織は不思議そうに首を傾げた。風丸は花織の美しい黒い瞳を見つめると柔らかな口調で語り始める。

「円堂のじいさんの最後のノートってあっただろ。あのノートの中の十一の言葉、その中で俺の心にも響く言葉があったんだ」

円堂大介の最後のノート。十一の格言が書かれた心の強さを表す言葉。花織は目を瞬かせる。風丸はそんな花織を見つめて表情を緩める。こんなにも、大切で温かで。俺には勿体ないほどの女性。

「その言葉は心のその三、大切なものを守る”ソコナシノヤサシサ”……花織、俺は」

あの言葉を耳にしてから風丸は自分のサッカーを振り返った。彼のサッカーの傍にはいつも花織の姿があった。いつしか夢中になったサッカーのきっかけは花織だった。サッカーを続けていくうえでも彼女のために勝ちたいと願う日があり、彼女のを守るために戦った日もあった。花織のために強くなりたいと力に縋るときもあった。

そうやってくじけそうな日も、ダメになった時もいつも花織は傍にいてくれた。風丸のサッカーが始まったあの帝国学園との練習試合から、今日この日まで風丸のサッカーの隣に花織の姿が無い日はなかった。

「今まで花織がいたから強くなれた。他の誰でもない花織の全てが、俺の力だ」
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