第13章 ふたりの軌跡
だから心のその三を聞いた時、風丸は確信した。花織がいてくれれば俺はもっと速くなれる。俺はひとりじゃないから強くなれる。守るべきものがすぐそばにあるから俺は成長できるのだと。
「花織、俺は花織が好きだ。これからもずっと花織を守っていくと誓うよ、だから」
風丸はそっと花織の左手の小指に何かを通した。花織が視線を落として自らの手を見つめる。彼女の小指には可愛らしい細いリングの指輪が嵌められていた。指輪には小さな青みがかった石が台座に嵌めこまれている。心のその三を聞いてから、風丸はずっと花織に贈る何かを探していた他のマネージャーに相談して、やっと彼女に似合いそうなこれを見つけた。
「これからも俺の傍にいてほしい。俺の隣にいて、一緒に戦ってほしい。もちろん、今日も」
「……一郎太くん」
こんなの、まるでプロポーズだ。と花織は頬を桃色に染める。胸の奥がじんわりと熱くなった。その言葉の喜びから溢れた涙がぽろぽろと頬を伝って流れ落ちる。花織は指輪を付けた左手でぎゅうっと自らの胸に下げた彼からの初めての贈り物を握りしめた。これ以上はない、今はこれ以上幸せな言葉はない。
こくりと首を縦に振った彼女の頬に手を触れて、風丸は微笑む。優しく涙を拭ってやると彼女の瞳と視線が交わった。花織が静かに目を閉じる。風丸はそれに答えるように彼女の頬に手を添えて優しく口づけを落とした。一瞬がまるで、永遠のように幸せだった。
風丸は花織の身体を強く抱きしめる。花織が風丸の胸に頭を預けた。彼女が贈ってくれたミサンガが、風丸が贈ってくれた指輪がふたりを強い絆で結びつける。今ならふたりでどこまででも走っていけそうな気がした。
「一緒に世界一になろう、花織」
風丸が花織に囁きかける。朝日が優しくふたりを照らし、包み込んだ。まるで祝福のように優しい光だった。