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諸恋

第13章 ふたりの軌跡




沈黙を破ったのは花織だった。花織の言葉に同調するように風丸が返答する。ふたりの視線は自然とサッカーグラウンドへと向いた。どちらともなく手を握り合って真正面からピッチに向き合う。胸の高鳴りがお互いの手を伝って共鳴し合う。

「これまで早かったね。初めは私たち、陸上部にいたのに」
「ああ、あの頃はこの場所に立っているなんて思いもしなかっただろうな」

花織のかつてを振り返る言葉に風丸はそれを懐かしむように目を細めた。早かった、本当に。思い出せば色々なことがあった。でもまだそれを振り返るには早い。花織は風丸を呼ぶ。

「一郎太くん」

花織が風丸を見つめれば、彼も花織のことを見た。彼の茶色い瞳と花織の黒の瞳が向き合った。彼の瞳を見て花織は決意する。彼とつながっていない方の手を握りしめて静かに言葉を告げた。

「私、一郎太くんが大好きだよ」

彼女が告げたのは愛だった。いつも何気なく交わしている言葉なのに風丸の心には大きくその言葉が響き渡る。彼女の白雪のような頬に手を添えた、温もりが指先から伝わっていく。

「……花織」
「私は、ずっと世界と戦う一郎太くんを応援してきた。でもそんな中でいつも悩んでいる自分がいたの。……自分が一郎太くんにとって相応しいのかずっと気になって仕方がなかった」

自分の頬に触れている風丸の手に自らの手を添えて、花織ははっきりとした声で風丸に自分の心を打ち明けていく。世界の頂点を見据えて走る風丸と共にいて感じていた自分の中の纏まり切らない感情。イナズマジャパンが、風丸が勝ち進むたびに大きくなっていった不安。風丸が自分の手の届かない遠くへ行ってしまうようなそんな思い。花織は風丸の両の手を取ってぎゅっと自分の両手で包む。そして彼を見上げて宣言した。

「一郎太くん、私は……。応援しているだけなんてできない。見守ることだけじゃやっぱり嫌」
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