第13章 ふたりの軌跡
「眠れないの?」
「まあな。……窓の外を眺めていたら誰かが見えた。間違いなく、花織だと思った」
「ふふ、夜間抜け出しの常習犯だからね。私」
くすくす、と花織が口元に手を当てて笑う。花織がこうして夜中に抜け出して豪炎寺に会うのは初めてのことではなかった。前回はイナズマキャラバンの旅の途中豪炎寺がチームに戻ってきた地、沖縄で。そして初めて豪炎寺とこうして夜中に出会ったのは、フットボールフロンティアの直前の合宿の夜だった。彼とこうして何か重要な夜に出会うのは、運命めいたところがある。花織が柔らかく微笑めば、豪炎寺も表情を緩ませた。しばし何も言わずに二人は見つめ合う。
「花織、今のお前に悩みはあるか?」
沈黙を破ったのは豪炎寺だった。花織は豪炎寺の問いかけに屈託なく微笑む。星明りが彼女の笑みを美しく照らす。彼女の表情に嘘偽りはなかった。
「ないよ。何も悩んでない」
きっぱりと彼女はそう言い切る。かつて、同じ問いかけを豪炎寺にされたことがあったか。その時も花織は同じように悩みはないと答えた。その時の言葉を繰り返すように彼女は言葉を続ける。
「私は自分の気持ちに言い訳しない。自分が何を思っているのか、チームのために何ができるのか。ちゃんと分かっているよ」
「そうか」
豪炎寺はその答えに満足げに微笑んだ。花織は今の問いかけで豪炎寺も最近の自分をきっと心配していてくれたのだろうことを悟る。豪炎寺はあまり花織の私情に踏み込むことはしないが、意外と花織のことをよく知っている。よく相談に乗ってもらった。いつも公平で厳しい人だ。だから信頼できる。
「ねえ、豪炎寺くん」