第13章 ふたりの軌跡
イタリアエリアの洒落たカフェに入り、鬼道は花織から事情を聞いた。カフェに着いた頃には花織の気持ちも落ち着いていてスムーズに話をすることができる状況にあった。花織は鬼道にこの頃の風丸と冬花の様子と、先ほど二人が仲睦まじく歩くところを見たのだと鬼道に語った。始終、彼女の表情は悄然とした色を浮かべていた。
「そうか。久遠と風丸が……」
彼女の語ったことは鬼道の予想を上回ることは無かった。彼女が狼狽しているのを見て、おそらく風丸に関する何かがあったのだろうということは瞬時に把握できた。この頃、彼女は冬花を気にしている様子もあったし花織が今語った話は、ずっと彼女が心の中で抱え続けてきた悩みなのだろう。
「……私、どうしたらいいんでしょう」
沈鬱な表情で鬼道の対面に座った花織はカップに入ったミルクティーの水面を見つめている。彼女は少しだけ唇を噛んで、ぎゅっと目を瞑った。先ほどの光景が目に浮かぶ。二人は何をしていたのだろう。もしかして……。そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
「……花織」
花織は風丸を無償で信じていたかった。だが、信じていいのかが分からなかった。もしかしたら独りよがりなのかもしれない、そう思うと今までの全てが嘘のように感じてぐらぐらと視界が歪む。
「風丸が嫌になったのなら、俺と付き合ってみるか?」
「……え」
想いにもよらない言葉に花織が顔を上げて鬼道を見つめる。鬼道は優しく微笑んで、カップを支えていた花織の手を取った。そっと花織の指に自らの指を絡ませて強く握りしめる。鬼道の手の温もりが優しく伝わる。
「俺はお前をそんな風に悩ませたり、落ち込ませたりしない」
ゴーグル越しに柔らかな眼差しが花織を見つめている。彼は花織を見つめて、紛れもない本心でその言葉を告げた。
「俺ならば、アイツよりもお前を幸せにできる」