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諸恋

第13章 ふたりの軌跡





「……なんだか新鮮」

花織は思わずぽつりと呟いてしまう。彼を起こさなければいけない、自分の任務ははっきりと分かっているのだが、すぐに起こしてしまうのは勿体ないような気がした。花織は壊れ物に触れるように優しく風丸の頬に触れ、いつも彼の左目を隠している前髪を払った。ぴくりと風丸の瞼が動いたような気がしたが、目覚める気配はない。ふふ、と花織の口元に微笑みが浮かぶ。なんだかとても可愛いらしい。

「一郎太くん。朝だよ、起きて」

耳元で囁いて少しだけ肩を揺さぶってみる。んん、と吐息を漏らして風丸が眉を顰めた。起きるだろうか、花織は首を傾げてその様子を見守る。意外と寝起きが悪いのかな、それとも今日は疲れているだけかな。花織はじっと風丸の顔を見つめて微笑まし気に笑う。そっと風丸の頬に手を触れ、今度は少し大きめの声で彼の名前を呼んだ。

「一郎太くん」

うっすらと風丸が目を開ける。花織……?と寝ぼけ眼と声で彼女の名前を呼んだ。力なく彼の手が伸びてきて花織の髪をかすめる。まだうつらうつらとしているようだ。花織はどきん、と胸が高鳴るのを感じた。いつもは彼のカッコいいところや頼もしいところにときめきを感じるのだが、こういうところも堪らなく好きだと思った。

「……」

さらり、と再び顔に掛かりそうになる自らの髪を抑えた。花織はちゅ、っと彼の唇に触れるだけの優しいキスを落とす。唇が軽く触れて、花織はゆっくりと顔を上げる。それとほぼ同時に風丸がぱっちりと目を開けて花織を見上げた。
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