第13章 ふたりの軌跡
というわけで、ブラジルとの一戦は大波乱の一戦だったのである。色々なことがありすぎた、選手たちが疲れるも当然だろう。物凄い試合だったから試合が終わった後、スタメン出場していた選手たちはアドレナリンが切れてしまった後はぐったりとしていた。
その余波だろうか、今朝は誰一人として選手たちが起きてこなかった。今日はAブロック予選でイナズマジャパンと死闘を繰り広げたイタリア代表オルフェウスとコトアール代表リトルギガントの試合を見に行く予定だというのに。
早く起きてきて仕度をしなければ、試合に遅れてしまう。だが待てども待てども選手たちは目覚めてくる様子がなかった。そこでマネージャーたちが選手たちの部屋を回って選手たちを起こしにいくことになったのである。
マネージャーたち四人で起きてこない選手たちの部屋を割り振りそれぞれが選手を起こすことになった。花織は割り振りの時に当然のように当てられた風丸の部屋へと向かって階段を上がった。彼の部屋の前に立って部屋の戸をノックする。いつもなら彼がすぐに顔を覗かせるのだけれども、今日は反応がなかった。
「一郎太くん」
花織が彼の名を呼びながらそろりと彼の部屋の戸を開けて中へと入る。部屋に入ると先日の、あの出来事を思い出して少しドキドキした。ふうっと大きく深呼吸をして静々と彼のベッドに歩み寄る。そしてそうっと彼の顔を覗き込んだ。ベッドの脇に背をかがめて、かがめたときに顔に掛かった自らの黒髪を耳にかけて風丸の顔を見つめる。
「……」
彼は眠っている。よくよく思い返せば彼の寝顔を見るのは初めてかもしれない。そう思った花織はまじまじと風丸の寝顔を見つめた。自分を見つめる優し気な茶色の瞳は伏せられて長いまつげが瞼を縁取っている。肌は女の子に嫉妬されてもおかしくないほどに綺麗だ。髪はもちろん結ばれていなくてさらりと枕に流れている。