第2章 選ばれた精鋭
「私が日本代表監督の久遠道也だ。よろしく頼む。」
久遠新監督は手短に挨拶を終える。だが選手たちは全く見ず知らずの人間が監督になることに納得がいかないようだ。中でも一番に円堂が声を上げる。
「どうして響木監督が代表監督じゃないんですか」
「久遠なら今まで以上にお前たちの力を引き出してくれる。そう判断したからだ」
響木監督は雷門中学をフットボールフロンティアで優勝に導いた手腕の持ち主。教えはいつも的確で、日本代表監督に相応しい実績を持つといえる。でもその響木監督が推す人なのだからより実力のある人なのだろうか。響木の言葉に円堂はそれ以上何も言わなかった。彼は黙って頷いて見せる。響木監督の選んだ人なら、という信頼があるようだ。選手たちが落ち着いたのを見て、久遠が一歩前に歩み出た。
「では代表メンバーを発表する」
どきん、と心臓が跳ねるような感覚に花織は目を瞑って両手を握りしめた。選手たちも表情が一気に険しくなる。皆誰もが選ばれたいと願っている。それでも実力者のみが代表となることを許される。
「豪炎寺修也、鬼道有人」
「はい!」
納得の二人。むしろ選ばれない方がおかしいふたりだ。花織は心の中で特に鬼道が選ばれたことに安堵する。だがまだ安心はできない。
「基山ヒロト、吹雪士郎」
「はい!」
この二人も実力者だ。どちらもフォワードとして圧倒的な実力を発揮していた。花織は固く目を瞑る。まだ四人、まだ四人だ。枠はまだ十二人も空いているし、今まで呼ばれたメンバーはほとんどストライカーだ。心臓が口から飛び出そうなほど緊張する。彼の緊張はこの比ではないのかもしれない。大丈夫、一郎太くんなら大丈夫……。何度も花織は自分にそう言い聞かせる。
制服の中に隠した彼からの贈り物を固く握りしめて彼の事だけを願った。