第12章 彼の秘密
「カオリ!」
少し強い口調でウィンディが花織を呼ぶ。
「そのユニフォーム、汚れたままにはしとけないだろ」
つうっと彼女の瞳からひとしずく涙が零れ落ちた。ウィンディは今日彼女に会った時から気が付いていた。花織がどれだけ自分が身に纏ったユニフォームを大事に誇らしげに思っているのか。何しろ今日の彼女はいつになくキラキラと輝くようだったのだから。そのユニフォームを汚されて彼女がショックでないわけがない。
「タオルとか、買ってくるから。とりあえずそれ着とけ」
「……うん」
ウィンディの強い瞳に押されて花織はようやく頷く。ウィンディの手からコトアール代表のジャージを受け取って、ウィンディに背を押される形でトイレに押し込まれた。荷物かけに彼のジャージを掛けて、自分の身体にぴったりと張り付いた茶色いユニフォームを何とか脱ぐ。ひやりと冷たいエアコンの風が花織の晒された素肌を舐めた。
……一郎太くんと同じ、ユニフォーム。
大事な大事な、彼と同じ背番号のユニフォーム。泥だらけに汚れてしまって……。彼が好きだとアピールするために今日はこれを身に纏った。だが汚されたことにより彼が好きだと主張してはいけないのだと言われているような気持ちになってしまった。
なんだか胸が酷く苦しくなって天井を見上げる。ライトの光が目に染みて涙が零れた。だがぐっと息を堪えて花織は手に握ったびしょびしょのユニフォームの泥を水道の水で洗い落とした。ユニフォームは誇り。たとえレプリカであってもそうだ。だからだろうか、自分にとっての大切な何かを汚されてしまった気持ちがぬぐえなくて胸がキリキリと痛んで仕方なかった。