第12章 彼の秘密
「カオリ、大丈夫か?」
「うん、平気。ちょっと服が汚れちゃったけど」
泥だらけになったユニフォームを指先でつまんで引き伸ばして、びしょびしょの彼女が困ったように笑う。まるで繕ったような笑い方だった。無理もない、今の彼女は笑っていられるような状況ではないほどに泥だらけだ。
でも、彼女の微笑みには言いようのない痛々しさがあった。泥だらけになったユニフォームを見つめて彼女は黙り込んでいる。今朝会った時の彼女と比べるとその表情があまりにも痛々しくてウィンディは見ていられなかった。自分のジャージの上を脱ぎ、花織に突き出す。
「カオリ、ユニフォームを脱いでこれを羽織ってろ。濡れてるけどそのユニフォームよりはマシだ」
「え、いいよ……。ウィンディのジャージが汚れちゃう」
驚いたような表情で花織が静かに首を横に振る。だがウィンディは真剣な顔で花織に自分のジャージを押し付ける。花織の肩を掴めば、彼女の服は自分のものよりも明らかにびしょぬれなのがわかった。
「このままそれを着ていたら、風邪をひく」
「大丈夫だよ、平気……」
だが意地でも彼女はそれを飲まずに首を振る。ウィンディは顔を顰めて花織のことを見つめた。花織の潤んだ瞳が自分を見上げる。今にも頬に零れてしまいそうな彼女の涙。彼女を動かす言葉は自然と分かった。