第12章 彼の秘密
最初は大したことのない雨だったのに、彼らが走り出して間もなく雨はザアザア降りへと変わった。雨足が強くなり始めてまだ数分と立たないというのに道には水たまりができ始めている。ウィンディも花織も手で雨よけを作りながら、パシャパシャと水を踏んで走る。
「とりあえず、屋根のある所を探そうぜ」
「……うんっ」
本当にひどい雨だ。真っ黒な空から大粒のしずくが数えきれないほど滴っている。とにかく屋根のある場所を探さなければ。まだ朝が早いせいか、今まで通ってきた道にある店はまだ開店すらしていなかった。ウィンディは雨に足を取られスピードを落としている花織に手を差し出す。
「カオリ、手を……」
その時だった。二人のすぐそばを物凄いスピードで車が走り抜ける。咄嗟のことで反応ができなかった。ウィンディは目を見開く。彼らの隣を通った車は勢いよく水たまりの泥水を跳ね飛ばした。
「きゃっ……」
その場で花織が蹲ってしまう。車が跳ね飛ばした泥水は花織の身に纏ったユニフォームを穢した。清々しいユニフォームの青色は腹部から胸元にかけて茶色く濁った色に変わっていた。
突然の出来事にも関わらず、花織の表情がスローモーションのように見えたウィンディは息を飲んだ。彼は見た。花織の表情が酷く傷ついた様にまるで今の空のように曇ったのを。今にも泣き出しそうな顔ほど彼女の瞳が揺れたのを。
「カオリ、とにかく屋根の下に」
ウィンディが花織の手を少し乱暴に引っ掴んで駆け出した。もつれそうな足取りで花織はウィンディについていく。何とか開いている店を見つけて二人はそこに駆け込んだ。ウィンディは店の奥に進み、手洗いの前で立ち止まる。