第12章 彼の秘密
「今日は、ジャパンのユニフォームを着てるんだな」
「う、うん。……どう、変かな?」
頬に手を当てて少し恥ずかしそうに花織がウィンディを見つめた。恥じらっている表情が慎ましく可憐であるが、ウィンディにとって大事なのはそこではなかった。ちら、と身体をウィンディから背けた彼女の背中の番号が見える。二番……、ウィンディと同じ番号。だが、それは。
「変じゃない。けど、アイツの番号なんだな」
「……うん」
恥ずかしそうに花織がはにかんで口元を隠した。白い頬が桃色に染まっている。だがそれはきっと走ってきたからというわけではないだろう。ウィンディはさっと自分のスカイブルーの髪を払う。花織は可愛い。だが、面白くない。
ウィンディは知っていた。花織が身に纏うユニフォームが誰のものなのかを。背中に刻まれているその名を読まなくともはっきりとわかる。
……アイツのユニフォームを着て、喜んでるなんて。カオリには俺のユニフォームの方がよっぽど似合ってる。
気が付かぬうちにウィンディは眉間に深く皺を刻んで忌々し気に花織の身に纏うユニフォームを睨んでいた。自然と怖い顔をして考えに耽るウィンディ。そんな彼に何かあっただろうかと花織が心配そうな顔をしてウィンディの顔を覗き込んだ。
「ウィンディ?」
「……っ」
じっと自分を見上げている花織の視線に気が付いてウィンディは少し仰け反った。かあっと顔が熱くなる。彼女の顔がいつもよりも近かった。黒い綺麗な目が自分を見つめていて、その中に自分が映っている。心臓が大きく脈打つのを感じた。本当に今日は苛立ったりときめいたり忙しい心臓は全く持って落ち着かない。
「もう行こう。なんだか雨が降りそうだ」
少しぶっきらぼうにウィンディが花織に言いながら、彼女に背を向けて走り出した。花織もウィンディに連れて足を踏み出す。確かにあたりには雨の匂いが立ち込めている。彼らが駆けだして間もなく、ウィンディの言った通り、灰色の空からは雨雫がぽたりと地面に落ちた。