第12章 彼の秘密
花織は髪を耳に掛けながら電話口に囁く。花織は半田とは学校でこそ仲良くしているものの、こうして電話で話したことはほとんどなかった。花織が電話で連絡を取るのは専ら風丸か、鬼道のみだ。それも花織から掛けることがほとんどであるから、彼女の携帯に誰かが電話を掛けてくるということが珍しかった。
『ああいや、あのさ……。ちょっと花織のことが心配になって』
「心配?」
『風丸とのこと、悩んでただろ?マックスはほっとけっていうんだけど、やっぱり気になってさ』
どきっと心臓が大きく音を立てるのを花織は感じた。日本を発つ前、彼女は風丸との関係を半田とマックスに相談していた。半田はそれをずっと気に掛けていてくれてこうして電話を掛けてくれたのだろう。きゅっと花織は自分のシャツの胸元を握る。固い感覚が指先に触れる。
『最近どうだ?風丸とは仲良くやれてるのか?』
「……うん。多分……」
自信はなかった。風丸は変わらずきっと自分を大切にしてくれているのだろうけど、先ほどの彼の態度には引っかかるものがあった。もしかして自分に何かやましいことを隠しているのかもしれない。先刻の出来事のせいでその不安は除けない。
『多分ってなんだよ。やっぱり何かあったのか?』
「私の思い過ごしだと思うんだけど……。ちょっと色々不安になっちゃって」
花織は大きくため息をついて髪を掻き上げる。嫉妬深い自分が一番いけないのだ。分かっているのだけれども。半田は電話の先で少し何やら考えているようだった。ううん、と彼が唸り声をあげる。
半田は花織の言葉でマックスの思惑が上手くいっていないことを悟った。風丸は花織の不安に気付いていないのだ。きっとそれだけ日本代表としての練習が大変なのだろうし、花織も態度に出さないようにしているということだろう。だが不可解なのは鬼道がフォローを入れていないという点だろうか。だが、半田は思う。俺がそんなことを推察したってわかりはしない。
とにかく、今も花織は不安を感じているのだ。