第12章 彼の秘密
ジャパンエリアまではあっという間だった。ウィンディと花織はジャパンエリアの入口までやってくるとペースを落としてクールダウンに入った。花織は上がった息を整えようと深呼吸を繰り返している。久しぶりに走るにしては、結構なハイペースで走ってしまっていた。
「カオリ、今日は一緒に走れて楽しかった」
別れ際、花織を引き留めてウィンディが真剣な顔で言った。
「やっぱりカオリの走る姿は綺麗だ」
改めて今日もそう思った。ウィンディはそっと花織の手を引き寄せる。花織は少し驚いたような顔をしたものの、ウィンディの手を振り払うようなことはせず、ウィンディの顔を見つめた。やはり走る姿を褒められることはまんざらではない。
「ありがとう。……私も楽しかったよ、久々に速いペースで走っちゃった」
他意はなく、花織は純粋にウィンディに共に走ってくれたことに対して礼を言う。彼女の答えにウィンディは少しだけ口元を緩める。そこで彼はふと、何かを思い出したような表情をしてショルダーバッグからあるものを取り出した。
「そうだカオリ、これ」
彼が取り出したのはイタリアエリアで売っていそうな少しお高めのチョコレートの箱だった。花織は突然差し出されたそれを見つめて不思議そうな顔をする。どうしたの、彼女の表情はそう言いたげだった。
「カオリにやるよ。チョコレート、甘いもの食うと元気になれる」
ウィンディは花織にチョコレートの箱を押し付けて言った。