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諸恋

第12章 彼の秘密





「さぁ、行こうぜ。一緒に走るって約束だったろ?俺、ずっと楽しみにしてたんだ」
「ウィンディ……」

屈託なく笑うウィンディ。花織は目を細めて微笑んだ。もしかしたら、ウィンディは純粋に花織と走ることを楽しみに毎日、花織が走ることができない間も彼はここで待っていたのかもしれない。そう思うと何となく申し訳ないのと同時に、彼と一緒に走りたいという気持ちにもなった。

「どこまで走るの?」
「ジャパンエリアまで。カオリのいつものコースで構わない。足には自信があるからな」

軽やかにウィンディが花織を先行して走る。その足取りは軽やかで花織よりもペースは速い筈なのに息の乱れもない。空色の髪が風に揺れて、走る姿は彼のように綺麗だ。

ドキドキと花織の心臓が高鳴る。花織の闘争心に自然と火が付いた。男の子だからといって負けてはいられない。花織だってずっと走ってきたのだから。花織はいつの間にか夢中になってウィンディについて走っていた。ウィンディは初めは先行していたものの、花織が乗り気になったのを見て花織が走れるぎりぎりのペースまでスピードを落とす。そしてチラチラと走る花織の姿に目をやった。

何度見ても綺麗だ、彼女の走るフォーム。どちらかといえば短距離向きの走りだけれど、女子にしては体力もあってウィンディの中の走りたいという欲を擽る。太陽に煌めく白い肌を伝う汗、さらさらと揺れる長い髪。何より今日の、俺と走る彼女は楽しそうだ。美しい黒い瞳がきらきらしている。

やっぱり、俺に相応しい人だ。

ウィンディは改めてそう確信する。少しだけ心拍数が上がったのも、顔が熱いのも走っているからじゃない。ウィンディの視線に気づいたのか、彼女がウィンディの方へ視線を向ける。

「どうしたの、ウィンディ?」

くすくす、と笑って楽しそうに花織が口元に手をやる。きゅん、とウィンディは自分の胸が不自然に締め付けられるのを感じた。ああいや、なんて言葉で誤魔化して花織から目を逸らす。彼女と過ごすたび、彼女の存在は彼の中でどんどん大きくなった。
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