第12章 彼の秘密
「この間のカオリ、元気がなかったから」
この間、という言葉に花織はハッとする。前回、ウィンディに会ったのはウィンディが花織をデートに誘いに来たとジャパンエリアまでやってきたときのことだ。あの時花織は風丸と冬花の些細な反応で、ウィンディにも少々冷たい態度をとってしまった。
あの時のことをウィンディは気に掛けてくれていたのか……。同じチームでもないのに。
花織はチョコレートの箱を受け取る。彼が自分を気に掛けてくれていたという嬉しさと心配を掛けていたのだという申し訳なさが胸の中で入り混じった。花織はウィンディを見上げる。
「ありがとう。心配、してくれたんだね」
ウィンディに対しての好感度を上げて花織は笑む。純粋に自分を心配をしてくれていたということが嬉しかった。ウィンディは明らかに先刻よりも親しみのこもった花織の微笑みにほんのりと顔を赤らめる。少しだけ照れくさそうに頬を掻いた。
「別に、当たり前だろ。カオリが元気なかったら俺は嫌だ……。なあ、カオリ」
そっとウィンディが花織の両肩に手を添える。俺ならあんな顔させたりしない。その言葉はまだ早い。この間のデートに誘った時の花織の反応でそれはよくわかった。ウィンディは真剣に花織の目を見つめて言葉を紡ぐ。
「また、俺と走ってくれるか?」
顔を真っ赤にして真摯に花織を見つめてウィンディが問いかける。さながらそれは告白のようだった。花織はウィンディの真剣さに一体何を言われるのだろうと警戒していたが、そんなことか、と表情を緩める。
「うん。また会えたら一緒に走ろうね」
ふわりと花織が爽やかに微笑む。さらさらと長い彼女の黒髪が風に揺れた。ジャパンエリアを背景に、控えめに微笑む彼女は、ただただ綺麗だった。