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諸恋

第12章 彼の秘密




花織は久々に早朝のランニングに出ていた。イタリア戦が終わって影山総帥との因縁も良い形とは言えなかったが終結して、彼女を縛るものは何もなくなったからだ。

だから念入りにストレッチをして整えられたストリートを駆ける。久しぶりの風を感じるこの感覚はとても楽しい。美しい景色がぐんぐんと後ろへ下がっていく。一歩踏み出すごとにはずむ身体、少し苦しくなるような感覚すら心地よくて。彼女の黒髪がそれを喜ぶようにさらさらと風に揺れた。

ジャパンエリアからアルゼンチンエリアを抜け、セントラルパークへと向かう。今までと変わらない練習コース。うん、大丈夫。風邪を引いてしまったし、ずっと走れていなかったから少し心配だったけれど体力は落ちていないみたいだ。走っていて花織はそんなことを思う。もう少しペースを上げてもいいかもしれない。

ぽんぽんと軽い足取りで駆ける花織、ふとそんな花織の目にある人物の姿が映った。スカイブルーの髪にバンダナを巻いた褐色の肌の少年。セントラルパークの街灯の下に立った、見覚えのある姿。彼は駆ける花織の姿を目でとらえて、満面の笑みを浮かべて花織に手を振った。

「カオリ!!」

名前を呼ばれ花織はゆっくりとペースを落として少年の前で立ち止まる。青色のコトアール代表のジャージを身に纏った少年。ウィンディだ。

「おはよう、カオリ!」
「おはよう、ウィンディ。朝早いね」
「ああ、カオリが来るのを待ってたんだ」

ショルダーバッグを肩に掛けたウィンディは当たり前のようにそう言った。花織はそんなウィンディの反応にどうしていいか分からなくて困惑した笑いを浮かべる。ウィンディは花織の手を取ってぐっと引っ張った。
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