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諸恋

第2章 選ばれた精鋭




鬼道さんなら間違いなく選ばれると思いますけどね。と花織は笑う。その表情には心からそう信じているのだという信頼が滲んでいる。鬼道はじっと花織を見つめる。今でもこの女を想う気持ちは変わらない。報われないとわかっていても、特別な気持ちは薄れない。それはやはり何度だってこうして自分を宥め、優しく諭してくれるからだろう。何度でもこの女に恋をしている。

「……同じことを言われても、お前にかけられる言葉はやはりちがう」
「え?」

鬼道が静かに立ち上がる。握りしめた花織の手を静かに離した。この手に触れる資格はないのだと思っても、どうしても彼女から差し伸べられる手を拒むことはできない。彼女が友人として接してくれているのだと理解していても、彼女がここまで自分を心配してくれるのは何か特別な感情があってのことではないかと期待してしまう。

「円堂にも同じことを言われた。今は目の前の試合に集中すべきだと。だがそれでも納得できなかった」
「……」
「俺はやっぱり不動と代表に選ばれた人間だと認めることができない。……それでもお前に話を聞いてもらえて、少しだけ気が楽になった」

鬼道は微笑む。代表候補を発表されてから、ようやくやわらげた表情をみせただろう。花織も鬼道につられて笑う。

「ありがとう、花織」
「いいえ。私には話を聞くことしかできませんから……」

ふたりは信頼しあっている。それは恋情や愛情を越えてまた別のものだ。

「家まで送ろう。……明日からよろしく頼む」
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