第2章 選ばれた精鋭
「ずっと影山の呪縛から逃れられないのかもしれないな……」
呪縛という言葉がまさに相応しい鬼道の心情。確かに鬼道のサッカーは影山零二の教えによるもので、少し前までは鬼道は影山の操り人形だったのかもしれない。でも今は決して違う。
「鬼道さん」
花織が震える鬼道のこぶしにそっと手を添える。柔らかで温かな、鬼道よりも小さな手。鬼道はハッとして花織を見た。花織は穏やかに微笑み、鬼道を見つめている。彼女の黒い瞳に映るのは自分。
「総帥と決別すると決めたのは鬼道さん自身ですよ。貴方はあの人の支配から逃れようともがいている。今も付き従うのならともかく、鬼道さんは今、自分の意志でサッカーをしている」
爽やかな風が花織の黒髪を揺らす。さらさらと流れる美しい髪。鬼道はその少女を見つめ、添えられた手を強く握った。そう、彼女こそが鬼道の初めての影山への反逆。燃えるような恋心は影山の支配下にあっても揺らぐことは無かった。花織はそれを知っている、だからこそ鬼道が一人の人として生きているのだとわかっている。
「たとえ不動君が総帥の教えのもとにあって、総帥の考えに従っているのだとしても。……鬼道さんは違う、それじゃいけませんか?」
提案するように花織が鬼道に語り掛ける。鬼道は思わず苦笑した。この女には適わない。心の中の蟠りがどうなったわけでもない。だがそれでもこの女に自分の存在を認めてもらえれば、少しだけ気分が楽になった気がした。
「そうだな……」
「それに不動くんがチームに相応しくなければ、代表選手にはなれないはず。選ぶのは鬼道さんではありません。だから鬼道さん自身のために、今は代表選考試合に向けて全力で向かうべきです」