第11章 麗しの花嫁
風丸はずっと花織のことを胸に秘めて、ここまでマグニード山を登ってきた。彼女が無事であるか、それだけが気がかりだった。厳しい山を登ると開けた場所へ出た。美しい花園と遺跡のような建物、まるで神話に出てくる楽園のような場所。おそらくここが花織が連れてこられたというヘブンズガーデンなのだろう。
「何をしに来た」
花織を探して遺跡の中へ駈け込もうとしたその時、上空から声が降った。風丸はその声を鋭く睨みつける。その声は花織を攫ったあの奇妙な男の声だった。
「ここは下界の者が来るようなところではない。すぐに立ち去れ!」
声の主はやはりあの男、セインだった。二人の仲間を従えて、建物のバルコニーらしき場所から風丸たちを見下ろしている。
「何やて!?つべこべ言わんと、はよ花織を返せっちゅーんじゃ!!」
リカがセインに食って掛かる。だがセインは厳しい面持ちを崩さずにきっぱりと言い切った。
「それはできない、あのお方はライオコット島に平和をもたらす捧げもの」
「捧げもの?」
「何を言ってるんだ!!」
捧げもの、という言葉に激昂した風丸が円堂の言葉にかぶせるようにして怒鳴った。セインがちらりと風丸を見下ろす。他の者とは目の色が違う。なるほど……。
セインは納得したような表情をしてすっと横に右手を広げた。すると建物の奥からエカデルが現れる。エカデルの腕には目を伏せ、白い衣装を身に纏った花織の姿があった。風丸は目を見開いて一歩前に踏み出す。