第11章 麗しの花嫁
強い拒絶の言葉にセインは少し苛立ちを覚えた。全く、これだから人間は。この儀式の重要性を、己に与えられた役割を分かっていないのだ。本当なら選ばれたことを誇るべきだというのに。セインは壇上から降りて、花嫁の正面に立つ。
装束の良く似合う、麗しい花嫁。ただの人間に与えるには惜しい。だから鍵はこの娘を選んだ。そして私はそれにただ従うだけ。だが……、あまりにも純真な瞳で少女はセインを見つめる。
「人間の愛は弱き繋がりなり……」
セインは冷たい表情で少女を見下ろした。セインは知っている、人間の愛情は儚く揺らぎやすい。時の流れにすら移ろう。そんな浅はかなもののために儀式を中断されては堪らない。
「所詮、下界の者の戯れだ。忘れてしまえ」
「嫌です」
花織の言葉にセインの表情が益々険しくなる。一歩一歩階段を下りて娘の元へと歩み寄った。強気な瞳、固い意志を感じる。セインは厳格なグリーンの瞳で花織を見据える。
「その愛は真か?人間の娘よ」
「……はい。私の彼への気持ちに嘘はありません」
「では、相手の男はどうだ?貴女を心から愛しているのか?」
凛としていた花織の瞳に一瞬だけ迷いが走る。風丸が本当に自分を愛してくれているかどうか。それは風丸にしか分からないことだ。本当は自分を想っていないのかもしれない。それでも花織は迷いを振り切る。信じるしかない、自分が彼を心から愛するのならば。
「……きっと。私はそうだと信じています」
「ならば娘よ、それを私と賭けをするか」