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諸恋

第11章 麗しの花嫁




少年は着々と儀式のための準備を進めていた。魔界の者が生贄を手に入れた今、一刻も早く魔王封印の儀式を執り行わなければならない。茶髪を三つ編みにした少年、セインは厳しい面持ちで準備に取り組んでいる。

「セイン」

名を呼ばれて彼は振り返る。壇上から階下を見下ろせば、そこにいたのはエカデルだった。隣には白い花嫁衣裳を身に纏った、伝承の鍵に選ばれた花嫁を従えている。

「どうしたエカデル、そのお方には準備して頂かなければならないことが」
「セイン、花嫁様はお前に話があるとのことだ」

エカデルがそう言って花嫁、花織をセインの前に行くよう促した。花織は静かにセインの前に歩み出る。エカデルに花織がここへ連れてこられた理由、そしてこの後どうなるかは大体のところ説明を受けた。

「エカデルさんに儀式の話は聞きました」
「ならば貴女の疑問は無いはずだ。伝承の鍵に選ばれた貴女は魔王の花嫁となる。それ以上に説明が必要か?」

セインは冷めた声で花織に告げた。花織は両手を胸の前で握り合わせる。彼女が一歩前に踏み出せばかつんとヒールの音が大理石の床に響く。

「セインさん、私には心に決めた人がいるんです。ですから花嫁にはなれません」
「心に決めた者……?戯言を。貴女は選ばれた、花嫁としての責務を務めて頂くだけだ」
「できません」

花織は凛とした面持ちでセインを見つめる。彼女の黒い瞳が真っすぐにセインを見つめた。強固な意志を持った瞳はきらきらと宝石のように輝いている。セインは顔を顰めた。

「私は彼と結ばれることを心から願っています。だから……、私は魔王の花嫁にはなりません」
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