第11章 麗しの花嫁
落ち着いた声色でエカデルが花織に語り掛ける。鋭い眼光が花織を見つめた。花織は少しだけ怯む。エカデルは静かな声で言葉を続けた。
「貴女様は伝承の鍵に選ばれた花嫁」
「私が、花嫁……?ちょっと待ってください」
焦った口調で花織がエカデルに言う。選ばれただかなんだか知らないが、花嫁なんかにされては堪らない。だが花織の心情など知ったことではないとばかりにエカデルは花織の背に触れて、椅子につかせようとする。
「さあ、朝食をどうぞ。朝食の後はお召し物の準備もできておりますから」
「いりません。だから私をみんなのところへ帰して」
花織が凛と睨みつけてエカデルの申し出を拒絶する。エカデルは仕方なし、というようにため息をついてひらりと掌を花織の前に差し出した。そしてではこうしましょう、と妥協案を述べ始める。
「貴女様が朝食を摂り、お着替えを済ませて頂ければ、我々のリーダーに会わせましょう。私のみに貴方様を自由にする権限などないのですよ」
要は、今ここで従えば交渉の余地を与えてくれるということだろう。花織は眉を顰めつつ、エカデルを見上げる。
「本当に、話をさせてもらえるのですね?」
「ええ、約束は破りません」
「……わかりました」
花織はため息をついて席に着く。目の前に広げられたご馳走に食欲は湧かない。ここがどこかもわからないのに、悠長に食事を摂っている場合ではない。だが、これが解放への手立てとなるならば話は別だ。
花織は黙って皿に盛られたフルーツのようなものをフォークで突き刺す。少しだけ躊躇ったが、覚悟を決めて彼女はそれを口に含んだ。