第2章 選ばれた精鋭
鬼道はきっぱりと言い切る。花織は鬼道の言葉に困ったように眉根を寄せた。鬼道は不動を毛虫のように嫌っている。花織も不動のことは正直好きに離れない。いい思い出がないからだ。それでも鬼道は頭ごなしに不動を否定しすぎではないだろうか。
「確かに私も……、あの人が日本代表に相応しい人格者だとは思いませんけれど」
鬼道の表情を見ながら花織は言葉を選ぶ。
「それでも、サッカーの実力は認めざるをえないかと。真帝国戦での不動くんのボール捌きは高い技術力がなければできません。選考に呼ばれるだけの実力はあるかと」
あの試合での不動のプレーを思い返す。鬼道と並ぶほどのボールコントロール能力。そして不動は実質鬼道と同じゲームメイカー。人を煽る言動ばかりだが、その言葉回しは彼が聡いことを示している。かなりの実力者であることは確かだろう。だが鬼道はそれでも苦い顔をしている。
「……サッカーはチームスポーツだ。個人の能力が高くてもどうにもならない」
「鬼道さん」
「それに俺は不動と上手くやれる自信がない」
鬼道が俯く、花織は目を見張った。不動を否定する鬼道のこぶしが微かに震えていることに気が付いたのだ。花織は鬼道を見つめる。
「どうしても影山を思い出してしまうんだ」
今もまだ囚われているのだ。花織はそう思った。真帝国の一件のあと、鬼道の心の内を聞いた時彼は言っていた。幼いころから影山にサッカーを教え込まれてきたと。そして影山は鬼道を自分の最高の作品だと言っていたと。
鬼道は影山と決別したと言い切る。それでも今でも彼は心のどこかで影山零二の作品から抜け出せていないと感じるのだろう。