第11章 麗しの花嫁
衝撃が和らいで風丸の腕の中で花織が顔を上げる。風丸は花織が無事であったことに安堵してゆっくりと彼女を拘束していた腕を解いた。
「ありがとう、一郎太くん」
「ああ」
彼女から離れた、その一瞬が命取りだった。円堂さん、上!!と立向居が叫ぶ声がフィールドに響く。その瞬間、ゴールのクロスバーの上に何者かが現れ、サッカーボールを空へと蹴り上げた。ボールは真っ直ぐに風丸の方へと飛んできて彼の身体を衝撃で吹き飛ばした。
「くぅ……っ」
彼の身体は地面に叩きつけられる。風丸が衝撃の痛みと舞い上がった砂埃に目を細めた。砂埃が消え、視界が明瞭になった時には花織の目の前に見知らぬ男が立っていた。
長い髪をみつあみにした、奇妙な服装を身に纏った少年。先ほどゴールのクロスバーの上に立っていたものと同一人物だろう。一体どこから現れたのかもわからない。まるで天使のような。
「な、何……?」
得体のしれないその少年に、花織は怯えて地面にぺたんと座り込んでいる。その不安げな眼差しが少年を見上げていた。少年は不敵に微笑み、花織に告げる。
「迎えに来た」
そう言って花織の額に少年が指を向ければ、花織の意識は奪われた。瞳は光を失い、ゆらりと身体を揺らして立ち上がる。少年は微笑み、花織の身体に触れようとした。
「花織……っ!!」