第10章 彼女の苦悩
「風丸くん……!」
ドアの隙間から秋が風丸を呼んで手招きした。花織の無事を確認したのだから、早く出て来いということらしい。だが風丸は首を横に振る。花織の手を握り返して秋に花織を起こさないように低い声で返す。
「花織の看病は俺がやる。だから木野たちはマネージャーの仕事をしててくれ」
「看病するって、風丸くん……!」
秋が困ったような顔をして風丸を見る。花織に言われた通り風丸を完全にシャットアウトする気はなかったが、風丸に花織を看病させる気も秋には無かった。ただ風丸を安心させるために少し花織の顔を見せる、そうすれば風丸は安心するだろうと思って彼を部屋へ向かわせたのに。
「……ん」
熱い吐息を漏らし、花織が少しだけ目を開けた。ぼんやりとした表情でただ彼女は呆然としていたが、数刻したあと自分が何かを握っていること、そして自分の目の前に誰かがいることに気が付いたようだった。
「花織」
「……なんで、」
動揺に掠れた声が小さく紡ぐ。潤んだ瞳が風丸を驚いた風に見上げた。風丸は花織の髪の撫でていた手を彼女の頬に滑らせて微笑む。
「大丈夫か、花織?」
「一郎太くん……。……なんで、ここにいるの」
秋には彼を入れないようにと言ったはずなのに。目を見開いている彼女は動揺し、いつの間にか握っていた彼の手を離そうとする。だが、風丸の方が花織の手を離さなかった。
「何でって、花織が倒れたって聞いたから」
「でも、わたし……、秋ちゃんに」