第10章 彼女の苦悩
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練習が終わって風丸は飛ぶように速く、花織の部屋へと向かった。
午後の練習が始まってから花織の姿が見えなかった。それが気にかかった風丸はそれとなく秋や春奈に彼女の所在を訪ねたが、秋や春奈は風丸に曖昧に誤魔化した。
だが彼女たちが何かが生じていることを隠していることにはすぐに気が付いた。他にも花織と練習前に話していたヒロトが心配そうに宿舎を見つめていたり、花織が普段やっている仕事を分担している秋たちの会話を小耳に挟めば、真実はすぐに明らかになった。
練習が終わって秋を問い詰め、花織が午後の練習直前に倒れたということを知った。
何故、彼女の体調不良に気が付かなかったのだろうか。風丸はそうやって自分を責めたりするよりも花織を心配する方が先だった。秋からその話を聞いてすぐ、秋が自分を引き留める声も聴かずに宿舎へと走った。乱雑に靴を脱ぎ捨てて階段を駆け上がる。
「……はっ、は」
彼女の部屋の前で一度息を整えた。きっと彼女は眠っている、起こしてはいけない。風丸は軽くノックをして花織の部屋の扉を開いた。
綺麗に片付けられた部屋。机には勉強した後だろうか、ノートと教科書が積まれている。だが風丸の視線は膨らんだ彼女のベッドに向けられていた。髪を揺らして彼は歩を進める。彼女のベッドの傍に膝をついて風丸は花織の顔を覗き込んだ。
いつもは白い頬に差した赤。両手を口元に当てて荒く呼吸を繰り返している。そして伏せられたまつ毛は濡れていて、涙の流れた跡がある。
「花織……」
躊躇なく花織の手を握って、風丸は花織の髪を撫でる。力なく花織の手が風丸の手を縋るように握り返した。風丸は少し安心したように微笑むが、彼女の体温がいつもよりもかなり高いことには気づいていた。