第10章 彼女の苦悩
うつらうつら、花織は揺蕩う波の中に沈んでいるような感覚を覚えていた。あれから花織はヒロトに自室のベッドまで運んでもらい、秋に手伝ってもらって着替えを済ませた。監督には春奈から話がいっているとのことだ。ヒロトと春奈が黙っていてくれれば、風丸には花織が倒れたことについては伝わらないだろう。
「秋ちゃん……」
ベッドサイドで花織のために氷嚢を交換してくれる秋を見つめて花織が秋を呼んだ。世界がぼんやりとしているのは、止まらない涙のせいだ。
自分のせいでチームに迷惑を掛けている。本当なら秋も自分もイナズマジャパンのためにやらなければならないことが山ほどあるのに。
「どうしたの花織ちゃん?」
「ごめんね、迷惑かけて……」
ポタポタと涙を枕に落として花織がベッドの中で蹲る。からりと氷嚢の中で氷がこすれ合う音がした。花織はベッドの中で蹲って膝を抱き、言葉を続ける。
「私、マネージャーなのに。しっかりしなきゃ、いけないのに」
風邪を引くと心も弱くなるというのは本当のことなのかもしれない。あの気丈な花織がめそめそとしていることに秋は少し驚く。
思い返せば、彼女が体調を崩すのも無理はなかったのかもしれない。秋が朝、目を覚まして台所へ向かえば花織はもうすでに朝食の下拵えを始めていて、聞けば洗濯も洗って干すところまで済ませてしまっていた。