第2章 選ばれた精鋭
「一人で自主練か?……もう暗いのだから早く家に帰れ」
鬼道が低い声で呟く。過保護な発言は相変わらずで花織は少しだけ苦笑した。
鬼道有人は花織の初恋の人だ。そして鬼道有人にとって花織も。
二人は一年のころ帝国で出会い、互いに惹かれあった。花織にとって風丸が雷門での生活とサッカーの全てであるならば。鬼道有人は帝国での生活と陸上、そして何より月島花織の基盤だ。花織は鬼道の存在があったから努力を覚えたのだから。
雷門に転校してきたころは花織は鬼道に憧れ、恋をしていた。今でこそ、その気持ちはないが彼を尊敬する心と信頼は変わらない。花織にとって誰より頼りになる人物で、花織は何かと彼を頼ってしまうことが多い。
逆に鬼道が花織に抱いている感情はあの頃から変わっていない。花織の親友としてのふるまいを見せ、風丸と花織を応援しているが、内に秘める感情はより一層強い。だからこそこんな風に花織に対して過保護とも呼べる言葉を掛けるのだ。
「ちゃんと防犯ブザー持ってますから。それより鬼道さんはこんなところでどうしたんですか?まだ一度もお家に戻られてはいないようですし……」
「監督のところに行っていた」
鬼道の表情が影を落とす。花織はすぐにその理由を察した。なぜなら選考試合のチーム編成を発表された時の鬼道はいつもの落ち着いた様子ではなかったからだ。その理由はチームメイトにある。
「……不動くんのことですね」
「ああ、監督が何故アイツを代表候補に選んだのか、俺には理解できない」
名前を聞くのも嫌だというように鬼道は顔を顰める。花織も鬼道の気持ちが分からないでもない。花織自身も不動に対していい印象はない。恐らくイナズマキャラバンに参加し、彼を知るものはきっとそうだろう。
それでも……。花織は鬼道を見つめる。鬼道が不動に抱いている嫌悪はあまりにも強い。チームメイトの中では大人で、落ち着いている彼がこんなに声色と表情に出してしまうほどなのだから余程の事なのだろう。
「少し座りませんか?私でよかったら話を聞きますよ」