第10章 彼女の苦悩
「……ん」
「目が、覚めた?」
「うん……」
少しぼんやりとした様子の彼女は身体を起こして体育座りをする。身を縮め、やはり少し寒そうな様子だ。ヒロトは花織の手にそうっと触れた。
「寒いのかい?」
「少しだけ……、でも大丈夫」
花織は目を伏せてヒロトにそう告げる。ヒロトは彼女が無理をして大丈夫、といっているような気がしてならなかった。ここのところの彼女はずっと、きりきりと働きづめな気がするからだ。
「花織さん、良かったら俺の話に付き合ってくれないかな。焚き火の傍で」
ヒロトは立ち上がって薪を火にくべた。少しだけ火が大きくなる。美しい赤がチラチラと燃える。花織はヒロトの提案に了承するように立ち上がった。ヒロトが彼女に隣に座るように促せば、花織は木暮を起こさないようにそうっとヒロトの隣に腰掛ける。焚き火の近くで先ほどよりは格段に温かい。
「ここなら、さっきよりは温かいだろう?」
「……うん」
まだ眠いのだろうか、彼女の答えは少しぼんやりとしている。うとうととしている、というよりも体が気だるげなふうに見えた。きっと疲れているのだ、最近の彼女は人一倍働いているとヒロトは思う。何でもかんでも自分でこなそうという傾向が強い。そして時々、思いつめたような表情をしている。
「ごめんね、俺たちに巻き込んじゃって。きっと風丸くんが心配しているね」
少しでも彼女を元気づけようと花織の恋人の名をヒロトは持ちだす。花織はその名前を聞いて、ヒロトの思惑とは逆にふっと眉を顰めた。そして悲しそうな顔をして膝に顔を埋める。