第10章 彼女の苦悩
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追手の姿はなくなったが、三人は一向に森から出ることができないでいた。森をずっと歩き続けるも、出口が一向に見えないまま。結局森から出ることはできずに日が暮れて、三人は野宿をすることになった。
ヒロトが木を擦って火をおこし、ヒロト、木暮、そして花織の普段は語らうことのないメンバーで火を囲んで様々な話をした。いつもは悪戯ばかりの木暮がヒロトと花織に無邪気に夢を語る様は、まるで子供が親に自分の空想を話すかのようだった。
しばらく話をして早朝から動き出すために。三人は眠りにつくこととなった。木暮も花織も疲れていたのか、すぐに眠りに落ちてしまった。ヒロトは一人焚き火番をしながら、少し離れた場所で眠る花織の顔を見つめていた。
彼女が戻らないことできっと、風丸くんが死ぬほど心配しているだろう。
ヒロトはそんなことを思ってふっと微笑む。決して笑い事ではないのだが、慌てる風丸の様子が目に浮かぶようだった。ヒロトは立ち上がってそろりと彼女の近くへ歩み寄る。すやすやと寝息を立てている彼女、とても可愛らしくて愛おしい。
……今なら、手の届く場所に彼女が居る。
ヒロトがそうっと花織の頬を撫でる。美しい黒髪に触れればさらさらとそれは彼女の頬に落ちた。羨ましいな、風丸くんは。いつもこんな風に彼女に触れられるなんて。
「……けほっ、けほ」
急に彼女が咳き込んで身を縮める。ヒロトはさっと手を引いた。寒いのだろうか、ここは外だし、南国の島とはいえ夜は冷える。かといって自分もユニフォームしか身に纏っていないものだから彼女には何もかけてやることができない。ヒロトは心配そうに花織の顔を見つめる。するとゆっくりと彼女の瞼が押しあがった。