第10章 彼女の苦悩
***
ヒロトと花織は木暮に絡まった蔦を取り除きながら、木暮から事の次第を聞いた。何でも染岡を落とし穴に嵌め、怒らせたのちこの森に逃げこみ、蔦の中に身を顰めたところすっかり体に蔦が絡まってしまったらしい。
「それじゃあ、帰ろう。月島さんも俺たちを心配して迎えにきてくれたみたいだし」
木暮の事情を聞いて、ヒロトは染岡に一緒に謝ることを約束し、何とか木暮に帰ることを了承させた。花織は少し不安げな表情をしている木暮に微笑みかける。
「何だったら私も一緒に謝るよ。ね、早く戻らないとお昼ごはん、なくなっちゃうよ」
「……うん、わかったよ」
木暮はそう言ってゆっくりと立ち上がる。彼は花織とヒロトの後ろを見て目を大きく見開いた。そして両手を挙げて大声でヒロトと花織の背後を指さした。
「う、うわあっ!!河童!!」
花織とヒロトは木暮の指さした方向へと視線を向ける。そこには先刻の奇妙な生き物が立っていた。サッカーボールを抱えて木の後ろからじいっと三人を見つめている。
「あ、あ…………。あれ、人間じゃん」
奇妙な少年はきちんと服を着ている。水かきもない。遠目に見れば河童の格好をしたただの人間に見えた。木暮は安堵した様子で声を漏らす。
「行こう」
ヒロトが関わらない方が良いとばかりに木暮と花織を促した。木暮は背後を気にしながら、花織は振り向かずに前へと進む。だが進む三人の足音とは違う足音が背後から微かに聞こえる。三人は目配せをした。立ち止まったり歩いたりを繰り返すと、その足音も彼らと一緒に動く。