第10章 彼女の苦悩
痛みに腰を摩っていた花織にヒロトが手を差し出す。花織は素直にヒロトの手を取って立ち上がった。そしてヒロトの問いかけに答える。
「うん、平気だよ」
「ならよかった。……ところで君はどうしてこんなところに?」
心底不思議そうな顔をしてヒロトが花織に問いかける。花織はジャージについてしまった土を払って、ヒロトに返答した。
「ヒロトさんを探しに来たんだよ。お昼の時間なのに戻ってこないから……」
ここで花織が言葉を詰まらせる。ヒロトと花織は自分たち以外の何者かの視線を感じたからだった。二人は自分たちを見つめる眼差しの方へ視線を向ける。そこにはサッカーボールを手に持った奇妙な生物の姿があった。
「……」
黄色いくちばし、キュウリのような眉毛、そして頭の上にはカップのようなお皿。背中には甲羅をしょっている。そんな奇妙な少年がサッカーボールを持って二人を見つめていた。
その奇妙な少年にヒロトは眉間に皺をよせ、若干引いたような表情をした。花織もその少年の奇妙な出で立ちに何とも言えずに押し黙っている。二人は何も言えずに立ち尽くすしかできなかった。
「助けてくれえ!!」
そんな拮抗した沈黙を割くように助けを求める声が森の中に響く。花織とヒロトはハッとして顔を見合わせた。今のは木暮の声だった。
「木暮くんっ!?」
彼の身に何かあったのか、そう思ったヒロトは咄嗟に花織の手を握って駆けだす。花織もその手につられて声の元へと駆けた。声を頼りに駆け付けた先、木暮はきゅうりの蔦に絡まっていた。
「木暮くん!」
ヒロトが花織の手を握ったまま、蔦に絡まって身動きが取れなくなっている木暮に声を掛ける。必死で蔦から逃れようとみもがいていた木暮はその声に顔を上げた。
「ヒロトさん、それに月島さんも……」
なんで二人が一緒にいるんだろう、そんな顔をして木暮は二人を見上げる。ヒロトは可哀そうなものを見るような目で木暮を見つめていた。
「何してるんだ?」
「何って……」
返答に困ったように木暮が苦笑いをする。
「それより早く助けてよ!!」